就労支援について

ジョブコーチとは?

1980年代から米国で行われた、障害のある人ひとりひとりに合った人的支援を行う事業 "Supported Employment(援護付き就労)" においてジョブコーチが登場しています。ここでジョブコーチとは、障害者の就労を支援するための専門的な能力をもつ人、という意味合いになっています。単に支援を行うだけではなく「継続的に」支援を行う能力が求められており、時には職場の中にまで入り込んでゆき、支援を行うこともあります。

ただ、米国でも日本でも、現在そのような資格制度はありません。そのため、なりたい人なら誰でもそう名乗ることができます。日本では役割や援助方法が十分に話し合われないまま言葉とイメージが一人歩きしており、ジョブコーチとは何かをもっと知ってもらう必要があると思われます。

ジョブコーチの役割

地域の中で、これまで就労がうまくいかなかった重度の障害がある人を対象に、一定期間、職場に付き添って支援を行い障害のある人の仕事の自立を助け従業員から必要な支援を引き出し(ナチュラルサポート)、ジョブコーチの支援は徐々に減らしていきつつ(フェイディング)、その後も必要なら継続的に支援を行います(フォローアップ)。

サポートは、その職場で自然と提供されるのが理想ですが、なかなかそのようにはなりません。そのときは、ジョブコーチが意図的にサポートを提供します。しかし、それをいつまでも続けるわけにはいかないので、ジョブコーチが職場で支援する時間を減らすために、支援の当初から、さまざまな角度でフェイディングに向けた準備を行います。一般に、このような対象者は仕事の要求水準や、同僚などが変化することが多く、それらに対応するのは困難となっています。そのため、そのような変化に対応できるようにジョブコーチは継続的なフォローアップが必要となります。

また、就労支援が有効に機能するには、援助機関、事業主、公的機関、利用者と家族などを巻き込んだ支援ネットワークの構築が不可欠となります。そのため、利用者個人に対する直接援助ばかりでなく「支援ネットワーク化に向けた支援(ワークプレース・サポート)」もジョブコーチの重要な役割となります。

障害者雇用の現状について

現在、障害者の雇用の促進と職業の安定を目的として、以下のことを中心とした施策が講じられています。

  1. 障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介等の措置を講じ、その職業生活における自立を図るための「職業リハビリテーションの推進」
  2. 身体障害者または知的障害者の雇用を法的義務とした「障害者雇用率制度」
  3. 身体障害者、知的障害者および精神障害者の雇用を経済的側面から支える「障害者雇用納付金制度」

障害者雇用率制度とは、事業主が「障害者雇用率によって算出される人数以上の身体障害者または知的障害者を常用労働者として雇用しなければならない」制度のことです。現在、民間企業における雇用率は1.8%となっています。

最近は企業の社会的責任が問われ、障害者雇用に目を向けるようになってきています。また、障害者の雇用に特別の配慮をした特定子会社を設立する動きも盛んです。しかし、まだまだ「福祉的就労」が多く、「一般雇用」が少ないのが現実であり、制度やシステムの改革を含めて就労支援への援助を考えていかないといけません。さらに、就労支援と生活支援は切り離せないため、ケアマネジメントの導入や地域支援ネットワークの構築が必要となってくるでしょう。

障害者の雇用の促進等に関する法律 障害者の雇用の促進等に関する法律施行令

障害者の雇用の促進等に関する法律 障害者の雇用の促進等に関する法律施行令リンク先 : http://www.houko.com/00/02/S35/292.HTM

京阪病院における就労支援

京阪病院は、平成12・13年度の大阪府による「精神障害者就労支援事業」に参加しました。精神障害者就労支援事業では、精神障害者を対象(年齢不問)として病院施設は働く場を提供し、大阪府が雇用し賃金を支払っています。病院施設職員は7日間スタッフ研修(講義、実技)に参加し、各病院施設にて訓練生(精神障害者)を実地指導しています。さらに、月一回、参加機関の職員が集まり現状報告や問題点等を意見交換しています。

参加機関:京阪病院(清掃)、久米田病院(清掃)、ねや川サナトリウム(清掃)、水間病院(清掃)、さわ病院(配食)、その他

事業実施期間での様子は以下のようになっていました。

  1. 平成12年10月〜平成13年3月
    参加者7名 1日3時間勤務(8:00〜9:00 15:00〜17:00)
    4名は介護老人保健施設にパート雇用される(1名退職)、2名は終了、1名は途中リタイヤ
  2. 平成13年 4月〜平成13年9月
    参加者5名 1日2時間勤務(15:00〜17:00)
    1名は通所授産施設へ、3名は引き続き継続、1名は終了
  3. 平成13年10月〜平成14年2月
    参加者6名 1日2時間勤務(15:00〜17:00)
    5名は京阪病院でパート雇用される(2名退職)、1名は途中リタイヤ
  4. 現在(H14年11月)
    3名の元訓練生が京阪病院で清掃でパート雇用されている。1日2時間(14:00〜16:00)

おわりに

「働く」ということは、「収入を得る」ことです。さらに、たとえ短時間であっても仕事(職業)をもっているということは、何らかの社会的役割を担うことになります。それによって、社会参加の実感が得られ、さまざまな「やりがい」を見いだすことができるようになります。

また、支援する側から考えてみると、「この人は普段こうやからきっとこれは無理やろうなぁ、まぁ出来てもこの程度かなぁ。」という思いこみがあったのが、実際にやってみると「この人こんなことできるんや!」ということがあったり、普段の生活と仕事のときの違いが見られたりして、反省することや感激することなどが多くあります。元々、本人の持っていた能力が、病気や障害によって制限されたり発揮されることがなくなってしまっただけであり、環境を変える・少しの援助を行うだけで、それをゆっくりと回復させてあげることができるようになるのだと思います。

最後に、就労支援事業に参加された方々の声を紹介しましょう。

自分が誰かの役に立つのがうれしい

60代女性。約20年間の入院歴あり。当時、生活訓練施設入所中でした。
「今まで自分は家族や周りに迷惑ばかり掛けてきて何の役にも立っていなかったけれど、今、自分が誰かの何かの役に立っていると思えてうれしい。今は家族も喜んでくれていると思う。体が元気に動くあいだは続けたい。」
この方は、現在は、兄の家族と同居。介護老人保健施設で働いています。

給料がもらえるのがうれしい

60代男性。30年以上の入院歴あり。当時、生活訓練施設入所中。若くして発病し、仕事の経験がありませんでした。
「「初めて自分で働いて給料をもらいました。給料をもらうのが、こんなにうれしいこととは。皆で仕事をすることができて、思ったよりも楽しく、安心できました。働けるとは思っていなかったので、働けてうれしいです。」と素直に喜びを表していました。
そして、その給料を受け取る時のうれしそうな表情や給料袋を大事にもって部屋へ戻っていく姿がとても印象的でした。この方は、一度再入院されましたが、まもなく退院。現在は、単身生活をしておられ、デイケアに通所されています。

この他にも、「生活にリズムができた」「生活に張りが出て毎日が楽しい」「楽しい、やりがいを感じる」「自信がついた」といった声をいただきました。

精神障害者に対する雇用支援施策の充実強化について

精神障害者に対する雇用支援施策の充実強化についてリンク先 : http://www.mhlw.go.jp/houdou/0108/h0823-1.html